再現計画第1号艦 日本海軍重巡洋艦「鳥海」 制作記

「鳥海」は開戦時からマレー攻略戦において旗艦任務に就き、その後ミッドウェー海戦ではミッドウエー攻略 部隊の1艦として参加します。
ミッドウェー海戦で機動部隊壊滅による艦隊再編成において、「鳥海」は新設された第八艦隊の旗艦となります。7月30日にラバウルに 進出して9日後の8月8日の深夜、ガダルカナルに進攻してきた連合国軍水上部隊と交戦し、これを撃破する勝利を得ます。
この時の「鳥海」を制作するにあたり、参考資料となるものが非常に少ないのは日本海軍の艦船の常識ですが、それでも「鳥海」はまだ写真資料に 恵まれているといえます。全体的な姿としては開戦直前の航空写真、よく「摩耶」(最近はやっと鳥海の説明がつく)と説明されているもの、 昭和17年シンガポールに進出した時の写真、昭和17年11月20日にトラック島に在泊中のものなどがあげられます。この写真によって艦橋に 設置された25ミリ連装機銃の状況がつかめます。
図面資料については、あまり重きを置いていません。なぜならば、諸般の理由で工廠または造船所側で修正することが多く、装備品の設置などが 図面と実際とでは違っていることが多いためです。 この鳥海の製作記はかなり工作が進んでいたため、追加部品の工作記事は省略しました。

★船体の制作★
昭和16年の12月から昭和17年初頭にかけて、鳥海は舷外電路を船体全周にわたって張り巡 らした、と考えられます。
キットでは、 この部分が省略されていますが、高雄型4艦の舷外電路の位置が それぞれ違っているためです。
この舷外電路を0.4ミリ角棒で再現するという、 オーソドックスな手法を採り入れました。鳥海の舷外電路は舷悌を避けるかのような、独特な配置になっています。このため、現存する写真と にらめっこで、貼っていきました。

★艦首の制作1★
艦首フェアリーダーと菊花紋章取付板の形状は高雄型各艦では違いが大きいので、やむなく写真のように省略され、それらしくそして どの艦とも指定しがたい形状表現となっています。メーカーとしては、この部分を再現するために費用的に大きな船体金型を4型も作ることはできないからです。

★艦首の制作2★
この部分を鳥海のオリジナルとするために0.3ミリプラ板を丸型彫刻刀で三日月状に切り出して菊花ご紋章取付板を作りました。フェアリーダーは、 ジャンク品で入手したアオシマの1/350潜水艦のフェアリーダーパーツを使用し、0.5ミリプラ棒でボラードなどを再現しました。


★前部甲板の制作2★
前部甲板の制作のポイントは、通風筒、ウィンチなどの装備品の配置が、高雄型4隻では写真や図面などから個々に違いがみられます。 鳥海の前甲板とするために主に写真を参考にして、通風筒・ウィンチなどを各サイズのプラ棒やプラ板で作ります。

★後部甲板の制作2★
後部甲板の制作のポイントは、後部主砲砲塔構造物をはじめとする後部甲板も高雄型4艦の違いを出すことです。 これらの配置を写真で確認しながら、通風筒・ウィンチ・ハッチ類など を各サイズのプラ棒やプラ板で作っていきます。

★艦橋と煙突1★
艦橋を含めた中央部の制作です。ガダルカナル攻防戦時の鳥海は艦橋前面中層部に設けられていた測距儀を撤去し、ここに25ミリ連装機銃を増設しました。この銃座を プラ板で制作、また艦橋右側に装着されていた吸気口のモールドをいったん削り取りプラ板を加工し取り付けました。白くなっている部分が追加工作した所です。

★艦橋と煙突2★
鳥海を含め高雄型は吸気設備を中央部のいたる所に設置していました。この吸気口をプラ棒で再現する他に、艦橋後部から煙突につながるラッパ型の大型吸気口や 艦橋左側の大型吸気口もプラ板などで再現しました。艦橋左側の大型吸気口は鳥海独特のもので、これもプラ板で再現しました。

★艦橋中央部1★
鳥海の特徴を表現するために煙突右側の蒸気パイプの内、マストの支柱に回り込む部分、洗濯室、魚雷調整所、格納庫横のダクト、 格納庫上部の後部構造物の改造などをプラ材で追加工作をしました。キットは金型の制約などによりやむなく省略された部分があり、このような作業を行いました。

★艦橋中央部2★
鳥海の左舷側は「摩耶」と誤って説明されている昭和16年に撮影された鳥海の写真を基本に作りました。前部煙突左に設置されている構造物の形状 魚雷調整所の位置が左舷側では前部高角砲と中央部探照灯支柱の間にあるなど右舷の位置と非対称なのが分かります。

★艦橋前面部★
艦橋前部パネルは、キットに含まれているものを使用せず、0.5ミリ厚プラ板で作りました。これはキットの出来に不満があるのではなく前面の窓の 穴開けに失敗し、何度も修正するうちに使用できなくなるという何とも情けないことになったためです。艦橋窓の下部にある整流装置がキットでは 省略されているので再現しました。

★前後部マスト★
前後部両マストは、0.5ミリ、0.4ミリのプラ棒を組み合わせて制作しました。マスト類をスケール通りの太さにするには、プラの量産成形では成形でき ないという問題があるため、どうしても太さや表現が実感を損なうものになります。リアル感を高める意味では、このような手法で作り直しをしました。

★25ミリ機銃★
銃身は0.3ミリプラ棒で、機銃機関部は0.5ミリプラ角棒で作りました。25ミリ機銃については、ファインモールド社から素晴らしい製品が発売されています。 しかし、あのポテンシャルに相応しいキットがないこと、キットを超細密モデルに仕上げるだけの技量がないため、あえて25ミリ連装機銃の実寸サイズの再現 だけに留めました。

★搭載機★
リニューアルWパーツにある94式水上偵察機、95式水上偵察機を使用しました。まず、太い肉厚の主翼を実機の主翼のように薄く仕上げるために、裏側を削り込み ました。ここまでやったなら支柱までといいたいところですが、支柱自体、細く薄いため強度不足による破損修理を繰り返すため、作業はここまでとします。

★8インチ主砲★
主砲はヤマシタホビーの8インチ主砲砲塔セットを使用しています。側面のスリット表現を、エッチングパーツを使用することなく再現できるということで開発された ものです。主砲砲塔上に設置されていた演習機は、戦時中に外され未搭載だったので砲塔天蓋にはこの装備品がない状態に商品化されています。

★12センチ高角砲★
12センチ高角砲はキットの砲塔を基本にしていますが、砲身基部形状が実艦のイメージと違うのでプラ板をポンチで打ち抜き、それを半月状にカットして取り付け ました。砲身は口径寸法に近い0.4ミリプラ棒を使用し、いったんプラ棒を基部に取り付け砲身の長さにカットしました。

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